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Trombone Lover's Forum Vol.1についてのお詫びと訂正

NTA Journal Vol.6 に寄稿させて頂きました Trombone Lover's Forum Vol.1で、一部妥当ではない内容がありましたので訂正させて頂きたく、この場をお借りしてお詫び申し上げるとともに、少し長くなりますが説明をさせて頂きたいと思います。

投稿の中で私は、ロマン派時代の初め頃テナーバストロンボーンが開発され、この楽器のためにソロ作品が書かれるようになっていった、との主旨を述べ、例としてウェーバーやダヴィット、ミュラーの曲を挙げました。
しかし投稿後いくつかの資料を見てみた私は、自身の見識が誤っていた事に気づきました。それに基づき現在の私の見解を以下に述べたいと思います。

ダヴィットのコンチェルティーノOP.4が初演されたのは1837年12月14日とされています。が、この曲を献呈され初演したソリストのクヴァイサーのアドヴァイスで、楽器職人のザトラーがBb管トロンボーンにFヴァルヴを組み込んだのが1839年となっています。つまりダヴィットがコンチェルティーノを書いた時点では、いわゆるテナーバストロンボーンは想定されていなかったであろうという事です。この楽器が普及してくるのは少なくともザトラーが発表した1839年以降であった事でしょう。
初版のタイトルにもTrombone Basseと書かれています。では作曲当初、どのような楽器が想定されていたかというと、当時使われていた長いF管のバストロンボーンであったらしいのです。ハンドル付きのF管で、Es‐durのあの曲を最初は吹いていたのしょうか。
またミュラーについてですが、コンチェルティーノOP.5は1828年に初演されている記録が残っており原典版の楽譜のソロ楽器の指定がTrombone Basso Principaleとなっていますので、これもF管バストロンボーンを想定して書かれたものと思われます。

他方、ウェーバーに関してですが、ロマンスは20世紀になってから楽譜が発見され、当時から何の楽器のために書かれたのか、そもそも本当にウェーバーの作品なのか疑問視されていたようですが、私は1980年代に書かれたあるレコードジャケットの解説から、ずっとトロンボーンの為に書かれた曲だと信じていました。
今回疑問に思って調べてみましたが、その解説以外にこの曲がトロンボーンのために書かれた事を裏付ける資料を私は見つける事が出来ませんでした。
ロマンスが作曲されたのは一説によると1811年から1821年の間頃と言われています。ウェーバーは1816年より少し前に、当時トロンボーンのソリストとして有名になっていたライプツィヒのフリードリヒ・アウグスト・ベルケという人をウェーバーのいたドレスデンに呼び寄せています。このベルケという人はも前出のF管バストロンボーンを使っていたようですがかなりの演奏技術を持っていた事が彼自身が書いたコンチェルティーノFdur OP.40からもうかがえます。このことからウェーバーが彼の演奏に触発されてロマンスを書いた可能性はゼロではないとは思います。
私はこの曲をそもそもF管トロンボーンで演奏できるものなのかと思い、手持ちのテナーバストロンボーンでヴァルヴをF側に固定して吹いてみました。すると、慣れない事をやっているのですぐには上手く吹けませんでしたが、ポジション移動とアーティキュレーションの合理性はB/Fトロンボーンで吹くより困難とは言えず、むしろ考え方としては合理的ですらあるように思えました。
しかし一方で、この曲はファゴットのためのものであるという記述も見たことがありますが、そこにはその根拠となる事は何も書かれていませんでした。確かにウェーバ−はファゴットのためのソロ曲を数曲書いてはいますが・・・。
いづれにしても、この曲がトロンボーンの為に書かれたのかどうかは現段階でやはり結論が出せないのではないかと私は思いました。少なくとも、テナーバスの為に書いたということはやはり無かったようにも思えますが、ハインリッヒ・シュテルツェルという人が開発したクロマティックの出せるテナーホルンをベルケが1821年に公演で使っている記録があるので、テナーバストロンボーンもアイディアとして無かったとは言い切れないかも知れません。

以上が私の現在調べ得た範囲の見解です。先の原稿投稿時、私の勉強不足による誤った認識から妥当性を欠いた記述になってしまった事をお詫び申し上げます。

下里 高志


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